「トランプ・アメリカ」最悪のシナリオと最高のシナリオは? 3分で分かるトレンドワード【トランプ政権と大統領令】
トランプ政権への疑問を慶應義塾大学教授・渡辺靖氏に解説してもらいました!③
トオルくん…学生時代の付け焼き刃の勉強がたたり、ニュースが分からないことだらけ。素朴すぎる疑問を発してよく相手を困らせる。20代会社員。
シズカちゃん…しっかり者で、いつも「これって〇〇ということですよね」とまとめてくれる。でもじつは結構天然ボケ。20代会社員。トオルとは同僚。
【第1回:そもそもなぜトランプは支持されるの?】
【第2回:大統領令、ツイッター……トランプが言ったことは全部実現するの?】
●「トランプ・アメリカ」、最悪のシナリオと最高のシナリオは?
シズカ…世界を牽引するアメリカの影はなくなっているわけね……アメリカはどう変わっていくのでしょうか。
渡辺(渡辺靖:慶應義塾大学SFC教授・専門はアメリカ研究、文化政策論。日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞受賞など)…連日トランプさんの言動がニュースになって、世界があたふたしているわけですから、ある意味で世界を牽引しているとも言えますが……(笑)。アメリカの経済を中心に考えるという「アメリカ第一主義」の一歩先、その果てにどんな世界があるのか、ということですよね。ひとつ例を出してみましょう。中国と台湾の「ひとつの中国」という原則。日本にも大いに関係のあるものです。先日、中国の習近平国家主席との電話会談で「支持する」と言ったようですが、今後、アメリカの経済がよくなるためであれば、この原則もいとわないのか。
トオル…大変なことになりそうですね。
渡辺…あるいは、経済とは直接関係はないですが、イスラエルの関係を強化するために、大使館をエルサレムに移すとか、クリミアの併合は目をつむり、ロシアに対する経済制裁も緩和するとなるとどうでしょう。
シズカ…世界がどうなるのか想像もつかないですね……。
渡辺…そうですね。法の秩序や支配、あらゆるものがぎりぎりのところで成り立っていた世界の「ガラス細工」が一気に壊れてしまうのではないか、そんな危惧があります。あまりにも一つひとつが大きな問題で、それが3つも4つも立て続けにきてしまえば、これまでの国際秩序が根本的なところから揺るがされかねない。
シズカ…ガラス細工がぱりんと割れてしまう。
トオル…恐ろしいな……。
渡辺…一連のトランプさんの言動というのは、そうした認識を持って戦略的に動いているものなのかどうか。私にはどちらかというと衝動で動いているように見えます。実際、アメリカさえ儲かれば、他国でどんな虐殺があっても、他の国がどんな計画を立てようとも、あるいは民主主義とか自由なメディアとか、そういうものがないがしろになってもかまわないんだ。そんな世界になってしまっては、結局アメリカの利益にもならないのではないでしょうか。
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